SDGsの17の「持続可能な開発目標」…「3.すべての人に健康と福祉を」

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SDGsの17の「持続可能な開発目標」の項目について、キリシマンが調べたことを書いていきます。
第3回は「3.すべての人に健康と福祉を」です。
何十年もの間、国連のシステムは病気との闘いで最前線に立ってきました。
そのため、国連は健康問題の社会的側面に対処する政策やシステムを作り出してきたんですね。

あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する…!

2000年から2015年にかけて、世界の妊産婦の死亡率(出生10万人に対する妊産婦の死亡者数)は、37%減少して、2015年には出生10万人に対する妊産婦の推定死亡者数は216人でした。
2016年SDG報告では、ほとんどすべての妊産婦の死亡は、設備の不十分、専門医へのアクセス限られているような状況下で発生しており、それは防ぐことができたことを示しています。

2015年には、世界的に4人に3人は出生時に熟練した医療従事者の支援を受けることができました。
5歳児未満の死亡率は、2000年から2015年にかけて急速に減少し、44%の低下が見られました。
それにも関わらず、2015年に5歳未満のおよそ590万の子どもたちが命を落しています。
グローバルな5歳児未満の死亡率は、出生1000人に対して43人でした。

HIV/エイズ、結核、マラリアを含む、主な感染症の発生は、2000年には世界的に減少しました。
しかし、2015年には210万人が新たにHIVに感染し、推定2億1,400万人がマラリアに感染しました。
また、世界人口の約半数がマラリアに感染する危機にあり、サハラ以南のアフリカ地域では全症例の89%を占めています。

2012年の推定では、世界の総死亡者数の68%を占める年間3,800万人の死亡は、非感染性疾病によるものであり、70歳以下の人々で非感染性疾病による死亡の3分の2は心臓血管の病気やがんによるものでした。

不健康な環境条件は、感染性・非感染性を問わず双方の病気のリスクを高めます。
2012年には、約88万9,000人が感染性の病気で死亡しました。
その原因は、主に水や土壌の糞便汚染、不適切な手洗いの設備、不十分な衛生サービスもしくはその欠如でした。
同じ年、家庭内及び環境の大気汚染によって、約650万人が死亡しました。

「SDG3」は、生と生殖に関する健康及び母子の健康を改善し、主要な感染症の流行を終わらせ、非感染性及び環境上の疾病を削減し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成し、かつ安全・安価で効果的な医薬品へのアクセスを確保します。

「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund to Fight      AIDS,Tuberculosis and Malaria)」

世界のほとんどの国で人々の寿命は延び、幼児死亡率は下がり、常時治療が受けられるようになりました。
多くの人々が基礎的な保健サービスや予防接種、きれいな飲料水や衛生施設を利用できるようになったのが、その理由でしょう。
国連は、これらの前進の多くに深く関わってきました。

特に、開発途上国において保健サービスを支援し、基本的な医薬品を届け、都市の健全化を図り、緊急時には保健支援を提供し、感染症と闘ってきました。

しかし、ほとんどの感染症の原因と治療法は知られており、ほとんどの場合、病気や死亡は支払い可能な費用で回避できるものでした。
主要な感染症は、HIV/エイズ、結核、マラリアです。

「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」は、こうした努力に大きく貢献してきました。

1981年に最初のエイズ患者が報告されて以来、7,800万人がHIVに感染し、3,500万人がエイズ関連の病気で死亡しましたが、HIV/エイズ対策では大きく進歩しました。

国連合同エイズ計画(Joint United Nations Programme on HIV/AIDS:UNAIDS)の推定によると、2015年末時点でのHIV感染者数は、3,700万人でした。
2016年6月までに1,800万人以上のHIV感染者が命を救う抗レトロウイルス療法を受けました。
HIVの母子感染を防ぐ努力は成功し、子どもたちのHIV感染は2010年の29万人から2015年には15万人まで減少しました。
しかし、HIV感染者の多くは治療にアクセスできず、HIV予防における進歩は減速することになりました。
2015年に新たに感染した人の数は、2000年の2,100万人に比べ35%の減少でしたが、2010年に比べるとわずか6%でした。
2015年、10万人以上の子どもを含め、110万人がエイズ関連が原因で死亡しました。
これらの死亡者の3分の1が結核によるものでした。

国連合同エイズ計画は、HIVに対してはライフサイクル的なアプローチを取っています。
それぞれの段階でその人に最もふさわしいHIV解決方法を見出すのです。
より効果的な、耐えられる、安価な治療法、それに治療やワクチンを発見するための研究への投資が依然として必要な状況にあります。

国連の総会は、国連HIV/エイズ・ハイレベル会合(2016年6月)で「HIVとエイズに関する政治宣言」を採択しました。
その中で、参加国は、国民の健康への脅威としてエイズの流行を2030年までに終息させると誓いました。
また、会合では2020年までに達成すべき暫定的な三つの優先目標を採択しました。
・HIVの新規感染者数を50万人以下にする。
・エイズ関連死亡者を年間50万人以下にする。
・HIV関連のスティグマ(汚名)や差別を廃止する。

あらゆる病気と闘う国連のシステム

何十年もの間、国連のシステムは病気との闘いで最前線に立ってきました。
そのため、国連は健康問題の社会的側面に対処する政策やシステムを作り出してきたのです。

国連児童基金(ユニセフ)は、子どもと母親の健康に焦点を合わせ、国連人口基金(UNFPA)は、プロダクティブ・ヘルス(生と生殖に関する健康)と家族計画の問題に取り組んでいます。
病気に関するグローバルな活動を調整する専門機関は世界保健機関(WHO)です。
WHOは、すべての人の健康を実現するという野心的な目標を定め、誰もがプロダクティブ・ヘルスを利用できるようにし、パートナーシップを構築し、健全なライフスタイルと環境を推進してきました。

WHOは、各種の歴史的業績の推進力となってきました。
たとえば、1979年の天然痘の根絶があります。
これを達成するためには10年に及ぶキャンペーンが必要でした。
国連のもう一つの機関、FAOは、2010年の牛痘の撲滅の影の推進者です。
この疾病は、2001年以降野外では検知されておらず、撲滅された最初の動物の疾病です。
牛痘の撲滅は、人間の天然痘の撲滅に続く、世界で二番目に撲滅された病気です。

「世界ポリオ撲滅イニシアティブ(Global Polio Eradication Initiative)」

WHOは、そのパートナーとともに、1994年に南北両アメリカ大陸から、2000年には西太平洋地域から、そして2002年にはヨーロッパ大陸からポリオをなくしました。
ポリオを完全に撲滅するグローバルな努力は、現在も続けられています。

1988年に「世界ポリオ撲滅イニシアティブ(global Polio Eradication Initiative)」が発足して以来、ポリオの患者数は99%以上も減少し、1988年の35万人から2015年には66人まで減少しました。

2016年、ポリオが残っている国は、アフガニスタン・ナイジェリア・パキスタンの3か国だけとなりました。

このイニシアティブを通して、世界の25億人以上の子どもたちが、この病気についての予防接種を受けました。
ポリオの撲滅から生じる公衆衛生部門の節約額は、400億ドルから500億ドルにも達すると推定されています。

「ロール・バック・マラリア(RBM)パートナーシップ(Roll Back      Malaria(RBM)Partnership)」

「ロール・バック・マラリア(RBM)パートナーシップ」は、1988年に、WHO、ユニセフ、UNDP、世界銀行が発足させた機関で、全世界的に調整された形で、マラリアに関する問題に取り組んでいます。

それには、マラリア流行国、その二国間・多数国間開発パートナー、民間部門、NGO、地域社会べースの組織、財団、研究・学術機関が参加し、ともにマラリアが死亡の主要原因とならず、かつ経済社会開発の障害とならないような世界を作り出すことに努めています。

「ロール・バック・マラリア(RBM)パートナーシップ」の総合的戦略は、支援の対象を普遍的なものにし、かつ医療制度を強化することによって、疫病率と死亡率を引き下げることを目的としています。

「ストップ結核パートナーシップ(Stop TB Partnership)」

グローバルな「ストップ結核パートナーシップ」は、2001年に設立されました。
結核になりやすいすべての人を支援し、必要とするすべての人が質の高い診察、治療、ケアを受けられるようにすることが目的です。

「ストップ結核パートナーシップ」は、国際機関や技術団体、政府プログラム、研究所や資金提供機関、財団、NGOs、市民社会、コミュニティ・グループ、それに100か国以上の国々の民間部門など、約1,500のパートナーで構成されています。

妊産婦及び乳幼児の健康を守るパートナーシップ(Partnership for Material, Newborn and Child Health:PMNCH)

「妊産婦及び乳幼児の健康を守るパートナーシップ」は、2005年に設立され、事務局はWHOに置かれています。

「安全な母性と新生児の健康を守るパートナーシップ」
「健康な新生児のためのパートナーシップ」
「子どもの生存のためのパートナーシップ」

…の三つの機関の約80メンバーが集まってつくられたもので、MDGsの達成を支援するために協力とコンセンサス形成を強化することを目的としています。

今日では、パートナーシップは、性、リプロダクティブ(生殖)、母性、新生児、子どもや青年期の健康などに関する団体など、77か国750以上の団体の同盟となっています。

パートナーシップは、
「すべての女性すべての子ども(Every Woman Every Child)」運動、
「女性のためのグローバル戦略(Global Strategy for Women’s)」、
「子どもと青年の健康(Children’s and Adolescent’s Health)」、
を支援しています。

もう一つの国連の大きな業績は、たばこの供給と消費を規制する画期的な公衆衛生条約を2003年に採択したことでしょう。
世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組条約」は、たばこの課税、喫煙防止と治療、不正取引、広告、スポンサー行為とプロモーション、生産規制などについて規定したものです。
条約は、喫煙に関連した病気を削減するグローバルな戦略の一環として採択されました。
毎年、たばこの喫煙が原因で500万人近くの人が亡くなってきました。

また、WHOは、肥満と闘う活動にも先導的な役割を果たしています。
肥満は、いまや世界的な健康上の問題となっています。
2014年、18歳以上の成人のうち19億人が標準体重を超え、そのうち6億人が肥満でした。

非感染性疾患の予防と管理に関するグローバル行動計画(Global Action Plan for the Prevention and Control of NON-communicable Diseases:NCDs)」

「非感染性疾患の予防と管理に関するグローバル行動計画」は、2011年の「非感染性疾患に関する国連政治宣言                                                                                                                                                                                                                                                                                         (UN Political Declaration on Non-communicable Diseases)」のコミットメントを達成することを目的にWHOが発展させてきました。

NCDsは、心臓病、脳卒中、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患、メンタル・ヘルスをはじめ、暴力や傷害なども含め、世界のすべての死亡原因の70%を占めています。
これらの死亡のうちの10件のうち8件は、低・中所得国で発生しています。

グローバル行動計画は、2025年までに達成すべき9つのグローバルなNCD目標に貢献します。
その中には、NCDs1による若年死を相対的に25%減少させることや、2010年の比率に合うようにグローバルな肥満傾向を抑えることなども含まれています。

「ワクチンと予防接種の世界同盟(Global Alliance for Vaccines and Immunization:GAVI)」

1980年から1995年にかけて、ユニセフとWHOの共同の努力によって6つの殺人病である、ポリオ、破傷風、はしか、百日咳、ジフテリア、結核に対する予防接種が、5%から80%にまで引き上げられました。
これにより、年に約250万人の子どもたちの命が救われることになりました。

同じようなイニシアチブに「ワクチンと予防接種の世界同盟」があります。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団の初期資金を基に、1999年に発足したものです。

2000年以来、「ワクチンと予防接種の世界同盟」の支援によって、B型肝炎、ヘモフィルス・インフルエンザ型菌(hib)感染症、百日咳に対する定期的な予防接種が行われ、また、はしか、ポリオ、黄熱に対しては1回きりの予防接種が行われました。

「ワクチンと予防接種の世界同盟」には、WHO、ユニセフ、世界銀行、民間セクターがパートナーとして参加しています。

まとめ

感染症疾患の領域でWHO優先課題としていることは、グローバルなパートナーシップを通して、マラリアや結核の影響を緩和すること、感染症の病気に対する監視、モニタリング、対応を強化すること、定期的な250の予防・管理体制を強化すること、そして、開発途上国が利用できるように新しい知識、治療介入の方法、実施戦略、研究能力を生み出すことなどです。

WHOは、関係国とともにHIV、結核、マラリア、それに顧みられない熱帯病の予防、治療、ケアへのアクセスを増加、維持し、ワクチンによる予防可能な病気を少なくすることに努めています。

WHOは、プライマリー・ヘルスケアの促進、基本的な医薬品の提供、健全な都市の建設、健康的なライフスタイルや環境の促進においても重要な役割を担っています。
また、健康に関する緊急事態においても重要な役割を果たしています。

WHOのもう一つの優先課題は、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(universal health coverage)」です。
WHOは、政策立案者、市民社会、学術団体や民間部門とともに、それぞれの国が信頼に足る国民医療制度を開発、実施、監視できるように支援しています。
また、各国が公平かつ平等で人間中心の公共医療サービスを受けられるようにするとともに、支払い可能な費用で安全かつ効果的な医療技術にアクセスできるようにし、保健医療情報サービスと証拠に基づく政策決定を強化できるように支援しています。

WHOは、健康に関する研究のための原動力としての役割も果たしています。
WHOは、パートナーとともに、特に開発途上国を中心に、現状とニーズに関するデータを集めています。
これは、遠く離れた熱帯林に固有の伝染病を研究することから遺伝子研究の進歩を監視することにまで及びます。

WHOの熱帯病研究計画は、最も広く利用される薬品に対するマラリア寄生虫の抵抗力について研究し、また熱帯性感染病の新しい治療薬や診断法の開発を進めています。
そうした研究は、国家及び国際の感染症監視体制を改善したり、新しい病気の予防戦略を開発することにも役立っています。

WHOは、生物学的物質と薬学的物質についての国際基準を設定します。
WHOは、プライマリー・ヘルスケアの基本要因として「必須医薬品」の概念を発展させてきました。
WHOは、各国と協力して、安全かつ効果の高い薬品をできる限りの最低価格で提供し、それが最も効果的な方法で利用されるように努めています。
そのため、WHOは、すべての健康問題の80%以上の予防もしくは治療のために不可欠であると考えられる数百種の薬品とワクチンを載せた「モデル・リスト」を作成しました。このリストは、2年ごとに改定されます。

WHOは、加盟国、市民社会、製薬産業と協力して、貧しい国や中所得国の優先的な健康問題の解決に必要な必須医薬品を提供するとともに、既存の必須医薬品の生産を続けさせています。

国連に与えられた国際的なアクセスを通して、WHOは感染症に関する情報のグローバルな取集を監視し、健康及び病気の比較統計を編纂し、安全な食糧や生物学的製剤や医薬品の国際基準を設定します。
また、がんを作り出すリスクのある汚染物質を明らかにし、普遍的に受け入れられるHIV/エイズの予防や治療に関するガイダンスを作成しました。

※ 「キリシマンのブログ」は、「持続可能な開発目標(SDG)」を支援しています。

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