SDGsの17の「持続可能な開発目標」…「15.陸の豊かさも守ろう」

sdgs_15 SDGs

SDGsの17の「持続可能な開発目標」の項目について、キリシマンが調べたことを書いています。
第15回は「15.陸の豊かさも守ろう」です。
SDGs15は、森林と他の生態系に直接依存する人のために生活が守られ、生物多様性が維持され、これらの天然資源の恩恵を将来の世代も享受できるようにすることを目指しています。

陸生生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の管理、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止、・回復及び生物多様性の損失を阻止する。

2000年から2016年にかけて、グローバルな陸域、内陸淡水、山地の保護区でカバーされた主な生物多様性地区の割合は、それぞれ16.5%から19.3%、13.8%から16.6%、18.1%から20.1%へと増えました。

こうした前進にも関わらず、2015年には、2万3,000種の植物、菌類、動物が絶滅の危機が高いことが明らかになりました。
1999年以来、少なくとも、7,000種の動物や植物が120か国で非合法的取引として検知されました。

2016年SDG報告によると、全地球史を通じて、人間の活動によって種の絶滅が通常よりも1,000倍の速さで進んでいます。

1990年から2015年にかけて、世界の森林地帯は、世界の全陸塊31.7%から30.7%へと減少しました。
それは、森林が農業やインフラ開発のように他の目的のために利用されるようになったのが主な原因です。

他方、他の土地は、植林、景観修復、もしくは自然の拡大によって森林となりました。
こうした進行中のプロセスや森林破壊を遅らせる努力のおかげで、グローバルな森林の純損失は1990年代の730万ヘクタールから、2010年から2015年の間に330万ヘクタールにまで下がりました。

SDG15は、森林と他の生態系に直接依存する人のために生活が守られ、生物多様性が維持され、これらの天然資源の恩恵を将来の世代も享受できるようにすることを目指しています。

生物の多様性と汚染

生物の多様性~世界の植物や動物の種のまばゆいほどの多様性~は、人間の福祉に欠かせない強靭な生態系とサービスを維持するために不可欠です。
これらの生物資源は、気候変動と人間の活動によって、とてつもない圧力をうけています。

1992年の「国連生物の多様性に関する条約(United Nations Convention on Biological Diversity)」は、生物の多様性の保護かつ保存することを目的とする主要な国際文書です。
195か国と欧州連合が加入しています。

条約は、UNEP(国連環境計画)が管理し、生物の多様性を保存し、その持続可能な開発を確保し、遺伝資源の利用がもたらす恩恵を公正かつ公平に共有し、かつ条約の実施に対する貢献を述べた報告を提出することを締結国に義務付けされています。

2003年に発効した「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(Cartagena Protocol on Biosafety)」は、遺伝子改変による有機物の安全な輸送、標識化、取り扱いを確保することを目的とし、締結国は170か国です。

取得と利益の配分に関する名古屋議定書(Nagoya Protocol on Biosafety )」は、利益の公平な配分を保証することを目的とし、2014年に発効し、現在の締結国は79か国です。

生物多様性の戦略計画2011-2020(Stragetic Plan for Biodiversity)」は、「愛知目標」として知られる期限を定めた目標を掲げ、生物多様性の損失と闘う国家、国際の努力を組織しかつ優先度を決めるとしています。

ユネスコの「人間と生物圏計画」

ユネスコの「人間と生物圏計画(Man and the Biosphere Programmee)」は、生物学的多様性の持続可能な利用と保存を進め、人間と環境との関係改善に努めています。
また、自然科学と社会科学、経済と教育の一体化を図ることによって生活を改善し、自然の生態系を守ります。
同時に、社会的に、文化的に健全で、かつ環境的に持続可能である経済開発への革新的なアプローチを促進します。

他の多様性に関連する条約は、以下のとおりです。

・「2004年食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約(International Treaty on Plant Genetic Resources for Food and Agriculture :TTPGR)」は、食料と農業のための植物遺伝資源の保全と持続可能な利用及びその利用から生じる利益の公正かつ衝平な配分を確実にすることを目的としています。
条約は、食料と農業のためのすべての植物遺伝資源をカバーし、「アクセスと利益配分の多国間システム(Multilateral System of Access and Benefit-sharing)」は、特別リストに掲載された64の作物と牧草類に限定しています。
また、農民の権利についても規定しています。

・「1979年長距離越境大気汚染条約(1979 Convention on Long-range Transboundary Air Pollution)」とその議定書は、国連ヨーロッパ経済委員会のもとで交渉され、ヨーロッパ及び北米における大気汚染の防止と削減とを規定しています。
また、産業製造過程から生じる硫黄酸化物の排出による酸性雨は、かなりの削減が見られました。
条約には、51か国が参加しています。

・「1979年移動性の野生動物種に関するボン条約(1979 Bonn Convention on the Conservation of Migratory  Species of Wild Animal)」は、UNEPが管理し、一連の関連した地域協定や特定の種に関する協定とともに、特に絶滅の危険にさらされている種を中心に、移動性の陸生動物、海洋動物、鳥類の種や生息地を保存することを目的としています。
条約には、124か国が加入しています。

・「1973年絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(1973 Convention on International  Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」は、UNEPが管理し、割当制や生存確保のための全面禁止を通して、野生の動植物の種や生産物の国際取引を規制しています。
条約は、3万種以上の動植物の種をそれぞれの程度に合わせて保護しています。

・「1972年世界遺産条約(1972 World Heritage Convention)」は、ユネスコが管理し、世界の文化遺産や自然遺産を明らかにして保存します。
そのため、全人類のために保存すべき優れた価値を持つ場所のリストを作成し、国家間の緊密な協力を通して保護します。

・「1971年湿地に関するラムサール条約(1971 Ramsar Convention on Wetlands)」は、湿地とその資源の保全と適正な利用を進めるための国家行動と国際協力のための枠組みを提供しています。
条約は、湿地の保全と適正な利用のあらゆる側面をカバーし、また、一般に生物の多様性の保全と人間社会の福祉にとって極めて重要である生態系として湿地をみなしています。

・「1952年国際植物防疫条約(1952 International Plant Protection Convention)」は、栽培植物、野生植物を問わず、世界の植物資源を保護することを目的としています。
そのため、植物の病害虫の侵入、まん延を防止し、またその適切な対策措置を促進します。
条約は、「植物検疫措置に関する国際基準(ISPM)」を発展させ、ISPMや条約による他の義務を実施できるように加入国を支援するメカニズムを提供しています。

「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services :IPBES)」は、政府間機関で、政策立案者からの要請に応えて、生物多様性や生態系サービスの現状を評価します。
プラットフォームは、UNEP、UNESCO、FAO、UNDPの国連4機関の後援のもとにあって、UNEPが管理しています。
その事務局は、ドイツのボンにある国連キャンパスの中に置かれています。
世界の1,000人の科学者がボランタリーの形でIPBESの活動に貢献しています。
専門家同士による相互評価は、IPBES活動の主要な一部を構成するもので、それによってさまざまな見解が反映され、その活動が最高の科学水準のものであるようにしています。

持続可能な森林管理

林産物の国際貿易高は、年間何千億ドルにも達しますが、世界の16億人以上の人々が、多かれ少なかれ生計を森林に頼っています。
先住民の知識の基盤として、森林は大きな社会文化の恩恵をもたらします。
そして、生態系として、森林は気候の変動の影響を緩和し、生物の多様性を保護してします。
新たな植林や既存森林の自然拡張のおかげで、森林の純消失率は下がってきていますが、毎年およそ1,300万ヘクタールの森林が失われ、森林破壊が続いています。
これは、地球温暖化に貢献する世界の温室効果ガス排出量の20%に相当します。
また、世界の森林とその土壌は、1兆トン以上の炭素を蓄えています。大気中の炭素の2倍です。

森林破壊の最も一般的な理由は、持続不可能な形の木材のための伐採、森林の農地への転換、不健全な土地管理の慣行、そして人間の居住地の建設などです。
国連は、森林原則に関する非拘束性の声明を採択した1992年のサミット以来、持続可能な森林管理の活動の最前線に立ってきています。

1995年から2000年にかけて、「森林に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Forests)」と「森林に関する政府間フォーラム(Intergovernmental Forum on Forests)」が森林政策に関する主要なフォーラムでした。
2000年、経済社会理事会は、「国連森林フォーラム(United Nations Forum on Forests)」を設置しました。
ハイレベルの政府間機関で、すべての国が参加でき、持続可能な森林管理のための長期的政治コミットメントを強化することを目的としています。
フォーラムの事務局は、持続可能な森林管理のための能力強化を目的とした技術支援を行い、また分析、情報サービスを行っています。

2007年、フォーラムは、国際森林政策と協力に関する画期的な合意である、「あらゆるタイプの森林に関する法的拘束力を伴わない文書(Non-Legally Binding Instrument on All Types Forests )」を採択しました。
これは、同じ年、総会によっても採択されました。
文書には、森林の被覆の損失を軽減する目的の4つのグローバルな目的が含まれています。
すなわち、森林劣化を防ぐこと、全森林依存人口の持続可能な生計を促進すること、持続可能なように管理された森林を増大させること、森林のために追加資金を動員することの4つです。

2015年、総会はその決議70/199で文書を「国連森林文書(United Nations Forest Instrument)」に変え、森林に関するグローバルな目的の予定表を「2030アジェンダ」の予定表に合わせて、2030年まで延長しました。

2017年1月、フォーラムの特別会期は「国連森林戦略計画2017-2030(UN Strategic Plan on Forests 2017-2030)」と2017-2030年間の作業計画を採択しました。

砂漠化防止

砂漠化とは、乾燥、半乾燥、乾燥半湿潤地域…いわゆる乾燥帯…における、気候変動及び人間の活動を含む種々の要因に起因する土地の劣化のことです。持続可能な開発の観点から言えば、過度の乾燥帯(砂漠)は除外されます。
乾燥地帯は、地上の陸地の41%を占め、少ない降水量と高い蒸発力が特徴です。

そこは、20億もの人々のふるさとです。その中には世界の貧しい人々の半数が含まれます。これらの人々のうちの18億人が開発途上国に住んでいます。

乾燥地帯における土地の劣化とは、乾燥地帯の生物学的もしくは経済的生産性の低下もしくは損失のことです。
その主な原因は、過剰耕作、家畜の過剰放牧、森林の破壊と貧弱な灌がい施設です。
UNEPの推定によると、それは地球上の表面積の3分の1と110か国以上の国々に住む10億人の人々に影響を及ぼしています。
サハラ砂漠以南のアフリカ諸国は、国土の3分の2が砂漠もしくは乾燥地帯で、特にリスクが高い状況です。

干ばつは、自然に発生する現象で、降水量が普通より非常に低い時に発生し、深刻な砂漠化の原因となります。
それは、複雑かつゆっくりと忍び寄る自然現象で、重要かつ拡大する経済社会的影響や環境上の影響をもたらします。
砂漠化や干ばつがもたらす結果は、食糧安全保障の欠如、飢餓、貧困です。

それに起因する社会的、経済的、政治的緊張は、対立を生み、一層の貧困化と土地の劣化を進める原因となります。
世界の砂漠化の拡大によって、何百万人という貧しい人々が新たに住宅と生計を求めなくてはなりません。

深刻な干ばつと砂漠化に直面している国(特にアフリカの国)における砂漠化防止のための国際連合条約(United  Nations Convention to Combat Desertification in those Countries Experiencing Serious Drought and / or   Desertification , Particularly in Africa)」は、この問題を解決しようとする条約です。
土地の回復、土地の生産性の改善、土地と水資源の保存と管理に焦点を当てています。
また、リスク軽減の原則に基づいて、国家干ばつ政策の構築を進める国を支援しています。
世界の20億ヘクタールの劣化した土地は、土地や森林に再生される可能性を持っています。
条約は、現地の人々が、「土地劣化ニュートラリティ」を中心に、陸上生態系に基づいて、自分たちで土地の劣化を転換できるような環境作りをする必要を強調しています。
また、被災国が国家行動計画を作成する際の基準を載せるとともに、行動計画の作成と実施に当たっては、かつてなかった大きな役割をNGOに与えています。
条約は、1994年に総会によって採択され、1996年に発効し、195か国が締結国となっています。

IFAD、FAO、UNEP、世界銀行など、国連の多くの機関が砂漠化防止の活動を支援しています。
UNDPは、ナイロビにある「強靭な生態系及び砂漠化グローバル政策センター」への投資を通して、砂漠化防止活動に財政的に支援しています。

※ 「キリシマンのブログ」は、「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。

国連

(ChickenonlineによるPixabayからの画像)

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